)” の例文
そこは、空気の湿りを乾草が吸い取ってしまうためか、闇がとついたようにじめじめしていて、時おり風に鳴ると、枯草が鈴のような音を立てる。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
わしの力でもちょっくり抜けない、なんでも松脂まつやにか何か附いてると見えてば/\してるから、ひっついて抜けないが、これは旦那の不断差す脇差で私も能く知っております
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
初々ういういしくも見えることのある地方の人のばりづよい意地でなく、江戸っ子はだの勝気な意地でもつ人で、だから弱々と見えるときと、そばへも寄りつけぬほど強い時とがあって
マダム貞奴 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
ふと、正三は壮烈な気持がいて来た。それから土蔵の前に近づいた。かねて赤土はってあったが、その土蔵の扉を塗りぶすことは、父の代にはついに一度もなかったことである。
壊滅の序曲 (新字新仮名) / 原民喜(著)
崖の縁をかがっている、その白樺を押し分けて、ひさしのように突き出た岩壁にすがる、やぐらのように大きな一枚岩で、浦島ツツジが、べったりと、石のを見せずに、ばりついているので
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)