笠松かさまつ)” の例文
笠松かさまつ図書という方は、この細貝家から婿入りをした人で、おとうさまの弟であるが、そのとき男ばかり四人のお子たちがいた。
やぶからし (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
墓を去つて、笠松かさまつあひだみちを街道に出やうとしたのは、それから十分ほど経つてからのことであつた。なんだか去るに忍びないやうな気がした。
父の墓 (新字旧仮名) / 田山花袋(著)
むかし、なにに使ったものか、崖のギリギリのところに、ちょうどナポリの笠松かさまつのようなようすで、すっくりと立っている。
キャラコさん:04 女の手 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
東北地方では、陸中横川目の笠松かさまつがあります。黒沢尻から横手に行く鉄道の近くで、汽車の中からよく見える松です。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
空気はすきとおって碧色あおいろをしていました。背景にはベスビオの山が黒々とそびえていて、そこから噴きでる火は笠松かさまつの幹のように立ちのぼっていました。
「僕は本当に知っているのです。犯人は間違いなく笠松かさまつ博士ですよ。そして被害者と云うのは博士の令嬢です」
背景にはヴェスヴィオが紅の炎を吐き、前景のがけの上にはイタリア笠松かさまつが羽をのしていた。
青衣童女像 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
当年の手記、奏議、書翰しょかん等の類に至るまで深くしまい込んでしまって、かつてそれを人に示したこともない。明治元年に権令ごんれい林左門が笠松かさまつ県出仕を命じたが、景蔵は病ととなえて固く辞退した。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
広重ひろしげの絵本『江戸土産えどみやげ』によって、江戸の都人士とじんしあまねく名高い松として眺め賞したるものを挙ぐれば小名木川おなぎがわの五本松、八景坂はっけいざか鎧掛松よろいかけまつ麻布あざぶの一本松、寺島村蓮華寺てらじまむられんげじ末広松すえひろまつ青山竜巌寺あおやまりゅうがんじ笠松かさまつ
頭をおさえて庭を見ると、笠松かさまつの高い幹にはまっかなのうぜんの花が熱そうに咲いている。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)