立出たちいず)” の例文
かかる処へ、左右の小笹哦嗟々々がさがさと音して、立出たちいずるものありけり。「さてはいよいよ猟師かりうどよ」ト、見やればこれ人間ひとならず、いとたくましき二匹の犬なり。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
亀屋の亭主もこれまでと口をつぐむありさま珠運口惜くちおしく、見ればお辰はよりどころなき朝顔のあらしいて露もろく、此方こなたに向いて言葉はなく深く礼して叔父に付添つきそい立出たちいずる二タあし三足め
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
思ひも懸けず後より、「やよ黄金丸しばらく待ちね。それがしいささか思ふ由あり。這奴しゃつが命は今霎時しばし、助け得させよ」ト、声かけつつ、徐々しずしず立出たちいずるものあり。二匹は驚き何者ぞと、月光つきあかりすかし見れば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)