空腹ひもじ)” の例文
倉地は割合に平気で受けて「困ったやつに見込まれたものだが、見込まれた以上はしかたがないから、空腹ひもじがらないだけの仕向けをしてやるがいい」
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「さだめて空腹ひもじいことでござろう。わたくしがかてを求めてまいります。そのあいだ、しばらくここに休息なされ。」
小坂部姫 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
空腹ひもじくてもう一足も歩けないものでございますから、ついこんなことをいたしました、どうか御見逃しを願います
女賊記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
呉々くれ/″\も言つておくが、その芸者が最後まで気にかけてゐたのは、三毛猫の事で、贔屓筋ひいきすぢのお医者さんや、市会議員を空腹ひもじがらせるなと言つたのでは更々ない。
ことにこの街のわかい六騎は温ければすなどり、風の吹く日は遊び、雨にはね、空腹ひもじくなれば食ひ、酒をのみては月琴を弾き、夜はただ女を抱くといふ風である。
水郷柳河 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
何分にも、十六七の食盛くいざかりが、毎日々々、三度の食事にがつがつしていた処へ、朝飯前とたとえにも言うのが、突落されるようにけわしい石段を下りたドン底の空腹ひもじさ。
売色鴨南蛮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
腹がへっても、空腹ひもじゅう無い
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
空腹ひもじくなればくらひ、酒をのみては月琴を彈き、夜はただ女を抱くといふ風である。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
「ふむ、どうもしやあしねえ、下さるものを頂きますのさ。慈善会とやら何とやらといって、御慈悲の会じゃげな。御辞儀無しに貰おうという腹さ、空腹ひもじい腹だね。はははは。」と高笑たかわらい
貧民倶楽部 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
謙作は空腹ひもじいのですぐはしを持った。それはパンまで添えた洋食であった。
港の妖婦 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
時分をすぎてさぞ空腹ひもじかったであろうと女たちが丁寧に給仕して、お蝶は蒔絵の美しい膳のまえに坐らせられたが、かれは胸が一ぱいに詰まっているようで、なんにも咽喉のどへ通りそうもなかった。
半七捕物帳:07 奥女中 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
「三毛猫を空腹ひもじがらさんやうに頼みまつさ。」