空耳そらみゝ)” の例文
八五郎の話を空耳そらみゝに聽いて、平次は塀外の松の木を中心に、その邊りの藪と草叢くさむらと、下水の中心を熱心に搜してゐるのです。
或日さる方の御邸で名高い檜垣ひがき巫女みこ御靈ごりやういて、恐しい御託宣があつた時も、あの男は空耳そらみゝを走らせながら、有合せた筆と墨とで、その巫女みこの物凄い顏を
地獄変 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
いへなんざふものとも、へるものとも、てんで分別ふんべつらないのだから、空耳そらみゝはしらかしたばかりだつたが、……成程なるほど名所※繪めいしよづゑ家並いへなみを、ぼろ/\にむしつたとかたち此處こゝなんです。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お角の抗議を空耳そらみゝに聞いて、平次はせまい濡縁から三疊の間に乘出すやうに、穴から隣の家の方を覗いて居ります。
或日さる方の御邸で名高い檜垣ひがき巫女みこ御霊ごりやういて、恐しい御託宣があつた時も、あの男は空耳そらみゝを走らせながら、有合せた筆と墨とで、その巫女の物凄い顔を
地獄変 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
空耳そらみゝで聞くんだから、モーギユーだつてヒヽンだつて少しも驚かねえ」
「だから、手前てめえにも着物や持物に氣を付けろと言つたぢやないか。それに、人の言ふことを空耳そらみゝに走らせるから、平次の子分のガラツ八ともあらうものが、財布を盜まれるやうなへまをやるんだ」