空壕からぼり)” の例文
「この戦乱に、何をうろついている。こうしてわれわれが、必死に防禦ぼうぎょ空壕からぼりを掘っておるのを、おもしろげに、見歩いているやつがあるか」
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦闘員が全滅してのち、城内の空壕からぼりに三千人ほどの女と子供がひそんでいて捕えられた。しかし一人も棄教に応ぜず「喜々として」死んだという。
安吾史譚:01 天草四郎 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
万三郎は空壕からぼりの中にいた。
風流太平記 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
怒気をたたえたおもてを振り向けて、彼方の空壕からぼり工事の下から同僚の武者を呼び出した。——その間も、宗易を逃がさぬように、きッと側に寄り添っている。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その時、城の空壕からぼりへ近々と駒をよせて、こう大音にどなっているものは、いうまでもなく相木熊楠である。
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奴婢長屋は、曲輪の遠い隅ッこで、晩には、逃げないように、空壕からぼりの橋は、はずされる。それに高い柵もあるのに、どうして来たのかと、小次郎は、目をまろくした。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は、奴隷長屋の前の空壕からぼりをのぞいた。逃げる奴隷はいないので、そこは、芥捨ごみすて場になっている。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
裏山の絶壁と、その門とのあいだに、細長い谷がめぐっていた。もちろん人工の空壕からぼりである。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
金屎かなくそか人間かわからない死骸が、蚊のごとく、ばらばら落ちては壁下の空壕からぼりうずめた。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
道は滝津瀬たきつせと変じ、空壕からぼりは濁水にあふれ、平井山の本陣の、その登り降りには、泥土に踏みすべるなど、ここいささか快速を加えて来たかに見えた攻城も、ふたたび自然の力にはばまれて
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上月城とお味方との通路を遮断しゃだんするため、高倉山のふもとや、村々の谷あいに長い空壕からぼりうがち、低地にも兵をかくし、高地にも兵をひそめ、陣地陣地には、柵を植え、鹿砦ろくさいいまわし
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いちど空壕からぼりの底へ降りて、そこから城壁へじのぼるのだった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まっ先に馬をとばし、空壕からぼりの下に迫った。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)