秘蔵ひぞう)” の例文
旧字:祕藏
おれの親方のった矢の根は、南蛮鉄なんばんてつでも射抜いぬいてしまうってんで、ほうぼうの大名だいみょうから何万ていう仕事がきているんだ。おれはそこの秘蔵ひぞう弟子だ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
翌日はみやげにすると云うて父が秘蔵ひぞうのシャボテンのをかいで、一同土肥君の宅に押しかける途中、小川で水泳して
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
金博士秘蔵ひぞうの潜水軍艦弩竜号どりゅうごう客員きゃくいんとなって、中国大陸の某所ぼうしょを離れたのは、それから、約一ヶ月の後だった。
こうおんなにいわれて、よろこばぬおとこはなかったでありましょう。若者わかものは、おおいにはしゃいで、このあいだもらって、秘蔵ひぞうしていた指輪ゆびわを、そのむすめあたえ、ゆびにはめてやりました。
海のまぼろし (新字新仮名) / 小川未明(著)
大沢は血眼ちまなこになってらっぱを探した、そうしてとうとう生蕃があめ屋にくれてやったことがわかったのでかれは自分の秘蔵ひぞうしている馬の尾で編んだ朝鮮帽をあめ屋にやってらっぱをとりかえした。
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
そも何者がうごくのであろうかと、ご承知しょうちでもござりましょうが、先生、ご秘蔵ひぞう亀卜きぼくをカラリと投げてうらなわれました
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それは深山理学士が戸棚の中に秘蔵ひぞうしていた或る品物だったが、彼はそれを係官に報告しなかった。それは決して忘れたわけではなくて、故意こいに学士の心にめたものと思われる。
赤外線男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なかで、なにかカチャリといったので、さぐってみると肌身はだみはなさない秘蔵ひぞう水独楽みずごまだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのそばには一片のひきちぎれた建築図が落ちている。それは痣蟹の秘蔵ひぞう図面ずめんに違いなかった。——それ等の凄惨せいさんな光景は、一つの懐中電灯でまざまざと照らし出されているのであった。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)