福禄寿ふくろくじゅ)” の例文
今あるのは猿が瓢箪ひょうたんなまずを押へとる処と、大黒だいこく福禄寿ふくろくじゅの頭へ梯子はしごをかけて月代さかやきつて居る処との二つである。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「オホホホホ、それは福禄寿ふくろくじゅのことでしょう? 無学な人はやっぱりちがうわ。布袋ほていは頭がはげているばかりよ」
苦心の学友 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
連れて行った子がゆびさすのを見ますと、蜀山人しょくさんじんの小さな戯画の額で、福禄寿ふくろくじゅの長い頭の頂へ梯子はしごをかけて、「富貴天にありとしいへば大空へ梯子をかけて取らむとぞ思ふ」
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
その後になっても外法頭げほうあたまという語はあって、福禄寿ふくろくじゅのような頭を、今でも多分京阪地方では外法頭というだろう、東京にも明治頃までは、下駄の形の称に外法というのがあった。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
修業が積んで来るに従って体は枯木のようにせ、眼は垂れて福禄寿ふくろくじゅ老人のようになって来る。そうなると月のなど谷にむかってわあと声をあげると、虎や狼などが群をなして集まって来る。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
仰向あおむくと蟇蛙ひきがえるを前から見たように真平まったいらつぶされ、少しこごむと福禄寿ふくろくじゅ祈誓児もうしごのように頭がせり出してくる。いやしくもこの鏡に対するあいだは一人でいろいろな化物ばけもの兼勤けんきんしなくてはならぬ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
秋「成程是は妙なだ、福禄寿ふくろくじゅにしては形が変だな、成程大分だいぶんい画だ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
一、秋元淡路守殿御壺、めい福禄寿ふくろくじゅ、日坂宿手前、菊川べりにて。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)