知覚ちかく)” の例文
旧字:知覺
刻々激しさを加えていく鳴動めいどうの中に、僕は奈落へふり落とされていくような感じを受けたが、それっきり知覚ちかくをうしなってしまった。
宇宙尖兵 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかし、子供の変化を知覚ちかくするごとに、父親であるという意識いしきがひとりでに伸びあがってくるから不思議である。
親馬鹿入堂記 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
たぶんこの知覚ちかくについてはわが輩と経験を同じくする人が許多あまたあることと信ずる。かくのごとく筋肉の力においても、精神的の力においても、各人にまだまだ開発すべき余裕のあるものと信ずる。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
生れたてのあかぼうのように、彼のひとみは驚嘆きょうたんして、この世の美に打たれている。知らず識らずまなじりから涙がながれて止まらない。涙は耳の穴をもこそぐった。この知覚ちかくさえ生きている証拠しょうこではないか。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
神経しんけい知覚ちかくとはいたましきほどわななけども、ちからなきほねなしよ。
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
そのとき、まひせいのエーテルガスがどこからか出て来て二人の肺臓はいぞうへはいっていった。それで、まもなく二人とも知覚ちかくをうしなって、動かなくなってしまった。
宇宙の迷子 (新字新仮名) / 海野十三(著)
衆の知覚ちかくというものは怖い。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だがスコールのために急に寒冷かんれいになり、全身はがたがたふるえて来、手も足も知覚ちかくがなくなっていた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私は大きい衝動しょうどうにたえきれないで、恐ろしい現場げんばを前に、あらゆる知覚ちかくを失ってしまいました。暗い世界に落ちてゆくような気がしたのが最後で、なにもかもわからなくなったのです。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)