相識さうしき)” の例文
或は我を識り給ふあらんも知るべからず。おん身は知らぬ大都會に往き給ふといへば、かしこにて一度我家におとづれ、我夫と相識さうしきになり給はんかた宜しからん。
予は最近数ヶ月にわたりて、不眠症の為に苦しみつつありといへども、予が意識は明白にして、かつ極めて鋭敏なり。若し卿等にして、予が二十年来の相識さうしきたるを想起せんか。
開化の殺人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
前年ぜんねんの八ぐわつ英堂和尚えいだうをしやう南都なんと西大寺せいだいじから多田院ただのゐんへのかへりがけに、疝氣せんきなやんで、玄竹げんちく診察しんさつけたことがあるので、一きりではあるが、玄竹げんちく英堂和尚えいだうをしやう相識さうしきなかであつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
左近は四郎左衛門が三宅典膳の家で相識さうしきになつた剣客である。左近方の裏には小さい酒屋があつた。四郎左衛門はそこで酒を一升買つて、其徳利を手に提げて、竹藪の中にある裏門から這入はひつた。
津下四郎左衛門 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)