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由斎
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ゆうさい
もう一
度おせんは
奥へ
向って、
由斎を
呼んで
見た。が、
聞えるものは、わずかに
樋を
伝わって
落ちる、
雨垂れの
音ばかりであった。
相手は
黙々とした
少年だが、
由斎は、たとえにある
箸の
揚げおろしに、
何か
小言をいわないではいられない
性分なのであろう。
それゆえせめての
心から、あたしがいつも
夢に
見るお
前のお七を、
由斎さんに
仕上げてもらって、ここまで
内緒で
運んだ
始末。