生菓子なまがし)” の例文
「すぐ来るがら。」と云いながら達二たつじは鳥を見ましたら、鳥はいつか、萌黄色もえぎいろ生菓子なまがしかわっていました。やっぱりゆめでした。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
生菓子なまがし蒸菓子むしがしというような名まえは、上方かみがたから西の子どもは知らなかった。餅菓子もちがしというと餅と菓子と、二つをならべたもののように思っていた。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
敵を討った三人の周囲へは、山本家の親戚が追々おいおいせ附けた。三人に鵜殿家からすし生菓子なまがしとを贈った。
護持院原の敵討 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「まあね。がこれでまだ、つ朝に塩瀬へでも寄って生菓子なまがしを少し仕入れて行かなくちゃ……」
遁走 (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
第三十八 米のソフレ はふくらんだ生菓子なまがしです。前の通りな分量と順序で玉子の黄身と砂糖と白身とを混ぜてそれをベシン皿か丼鉢どんぶりばちへ入れてテンピの中でおよそ十五分間火を弱くして焼きます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
砂糖の塔、生菓子なまがし麦藁むぎわらのパイプを入れた曹達水ソオダすいのコップなどの向うに人かげが幾つも動いている。少年はこの飾り窓の前へ通りかかり、飾り窓の左に足を止めてしまう。少年の姿は膝の上まで。
浅草公園:或シナリオ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そんならその干菓子でないほうの、今いう生菓子なまがしをなんといったかというと、百年前までの日本語はおちゃであった。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)