甘心かんしん)” の例文
しかるに彼はこの志士が血の涙の金を私費しひして淫楽いんらくふけり、公道正義を無視なみして、一遊妓の甘心かんしんを買う、何たる烏滸おこ白徒しれものぞ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
わしは、わしがされた通りを、彼等にして返さねばならぬのだから、それには彼等の甘心かんしんを得て、無二の親友となることが何よりも必要であった。
白髪鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
斉は斉泰せいたいなり、黄は黄子澄こうしちょうなり、練は練子寧れんしねいなり、しかして方は即ち方正学ほうせいがくなり。燕王にして功の成るや、もとよりこの四人を得て甘心かんしんせんとす。道衍は王の心腹しんぷくなり、はじめよりこれを知らざるにあらず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
今までの単純な餓えと憤りのほかに、兇暴な復讐性と、先天的の猛獣性とが入り乱れて、相手の一人をあくまで追究して、その骨をまでしゃぶらなければ甘心かんしんができないという執念に燃え出している。
大菩薩峠:37 恐山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
ひとえ定役ていえき多寡たかを以て賞罰の目安めやすとなせしふうなれば、囚徒は何日いつまで入獄せしとて改化遷善せんぜんの道におもむかんこと思いもよらず、悪しき者は益〻悪に陥りて、専心取締りの甘心かんしんを迎え
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)