爪端つまさき)” の例文
結び目を解くきりのような爪端つまさきのそったものであった。桑は心でひどくよろこんだ。翌晩になって蓮香もこないので、桑はかの履を出して女のことを思いながらいじった。すると李は飄然と来た。
蓮香 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
まず最初に容貌かおだちを視て、次に衣服なりを視て、帯を視て爪端つまさきを視て、行過ぎてからズーと後姿うしろつきを一べつして、また帯を視て髪を視て、その跡でチョイとお勢を横目で視て、そして澄ましてしまう。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
ツと思はず聲を出した時、かの聲無き葬列ははたと進行を止めて居た、そして棺を擔いだ二人の前の方の男は左の足を中有ちうに浮して居た。其爪端つまさきの處に、彼の穢い女乞食がどうと許り倒れて居た。
葬列 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
しかしたちまちにして一トあしは一ト歩よりおそくなって、やがて立止まったかと見えるばかりにのろく緩くなったあげく、うっかりとして脱石ぬけいし爪端つまさき踏掛ふんがけけたので、ずるりとすべる、よろよろッと踉蹌よろけ
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
ツと思はず声を出した時、かの声無き葬列ははたと進行を止めて居た、そして、棺を担いだ二人の前の方の男は左の足を中有ちううかして居た。其爪端つまさきの処に、きたない女乞食がだうと許り倒れて居た。
葬列 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)