燗番かんばん)” の例文
「あの男は不思議に念佛嫌ひでね、——百萬遍が始まると、お勝手へ行つてお燗番かんばんをしたり、料理の手傳ひをしたりして居ましたよ」
彼は立ちあがってお燗番かんばんを手招ぎした。酔った勢いでやって来て、思いをさらけだして満足して、そこでまた一時に酔いを発した。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
料理は四十人前注文してある、お酒も一人あて一二合ぐらいは出ることになっている、お燗番かんばんは善慶寺の奥さんや娘さんに手伝って貰うつもりだけれども
細雪:03 下巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「——うちのにお燗番かんばんをさせちゃだめですよ、燗のつくまえに飲んじまいますからね」
雨あがる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
一家のしまりをしている、四十六七になった、ぶよぶよ肥りの上さんと、一日小まめに体を動かしづめでいる老爺おじいさんとが、薄暗いその囲炉裏の側に、酒のお燗番かんばんをしたり、女中の指図さしずをしたりしていた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
其の給仕や酒の燗番かんばんをするのは、誰あらう、母一人です。
一月一日 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
「あの男は不思議に念仏嫌いでね、——百万遍が始まると、お勝手へ行ってお燗番かんばんをしたり、料理の手伝いをしたりして居ましたよ」
台を隔てて主人の留吉とめきちと女房のおいせがいる。おいせは燗番かんばんであり、留吉はさかなを作る。
饒舌りすぎる (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
續いて藝者のおりんとお袖、おつたは呑む眞似だけ。大方からつぽになつた徳利は、杯を添へてとものお燗番かんばんのところに返されました。
「船の中で正氣だつたのは、磯屋とお燗番かんばんの外には、お前一人だつたと言ふぢやないか。お前は何にか知つてるに違ひあるまい」
その後ろに從ふのは、幇間たいこもちが二人、燗番かんばん一人、盜食ぬすみぐひや夜逃げはするかも知れませんが、人間一匹殺せる人相のはをりません。
爺やの卯八——その夜のお燗番かんばん——は、その頃は飛切り珍しかつたギヤーマンの徳利とくりを捧げてともから現はれました。
爺やの卯八——その夜のお燗番かんばん——は、その頃はとびきり珍しかったギヤマンの徳利を捧げてともから現われました。
そんな事はお燗番かんばんの杉之助の自由自在だ。が、その目印の糸を、多與里に附け替へられたとは知らなかつた。
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
へそで煙草を吸はせて、お尻に彦徳ひよつとこの面を冠せて、逆立ちになつてかつぽれを踊つて、婆ア藝者のお粂とけんを打つて、ヘトヘトに疲れると、お燗番かんばんの周助にねだつて
「お島はお燗番かんばんをしてゐたんです。酒に毒が入つて居ると、お島が疑はれるのも無理はありません」
燗番かんばんは中田屋杉之助自分でうけたまはり、小僧三人に雜用をさせて、晝少し過ぎに大川橋から漕ぎ上つた船が、向島の土手の賑ひを右手に眺めて歌ひ乍ら、踊り乍ら、そして飮み乍ら
銭形平次捕物控:167 毒酒 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
若くて無役で無類の放埒ほうらつ、この日は柳橋から花見船を仕立てさせ、用人村川菊内、愛妾あいしょうのお町、仲間ちゅうげんの勝造、それに庭掃きの親爺三吉をお燗番かんばんに、芸妓げいしゃ大小三人、幇間ほうかん一人をれて
「それは結構だが、——私ではお燗番かんばんの足しにもなりませんよ」
「山口屋と取巻きの連中は屋根の中で、お燗番かんばんと船頭はともでさ」
「お燗番かんばんは?」
「お燗番かんばんは?」