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無雑作
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むざふさ
松本は
拳を固めて
卓を打ちつ「実に
怪しからん奴だ、其事は僕も
予め行徳君に注意したことがあつたが、行徳君は
無雑作に打ち消して
仕舞つた——八ツ裂きにしても此の
怨は
霽れない」
(おい/\、
松本へ
出る
路は
此方だよ、)といつて
無雑作にまた五六
歩。
夕日
斜に差し入る狭き
厨房、今正に
晩餐の準備最中なるらん、
冶郎蕩児の
魂魄をさへ
繋ぎ留めたる
緑滴らんばかりなる
丈なす黒髪、グル/\と引ツつめたる
無雑作の
櫛巻、
紅絹裏の長き袂
客去りて
車轍の
迹のみ
幾条となく砂上に
鮮かなる山木の玄関前、庭下駄のまゝ
枝折戸開けて、二人の
嬢の手を
携へて現はれぬ、姉なるは白きフラネルの
単衣に、
漆の如き黒髪グル/\と
無雑作に
束ね