無雑作むざふさ)” の例文
旧字:無雜作
松本はこぶしを固めてつくゑを打ちつ「実にしからん奴だ、其事は僕もあらかじめ行徳君に注意したことがあつたが、行徳君は無雑作むざふさに打ち消して仕舞しまつた——八ツ裂きにしても此のうらみれない」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
(おい/\、松本まつもとみち此方こつちだよ、)といつて無雑作むざふさにまた五六
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
夕日なゝめに差し入る狭き厨房くりや、今正に晩餐ばんさんの準備最中なるらん、冶郎蕩児やらうたうじ魂魄たましひをさへつなぎ留めたるみどりしたゝらんばかりなるたけなす黒髪、グル/\と引ツつめたる無雑作むざふさ櫛巻くしまき紅絹裏もみうらの長き袂
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
客去りて車轍くるまあとのみ幾条いくすぢとなく砂上にあざやかなる山木の玄関前、庭下駄のまゝ枝折戸しをりど開けて、二人のむすめの手をたづさへて現はれぬ、姉なるは白きフラネルの単衣ひとへに、うるしの如き黒髪グル/\と無雑作むざふさつか
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)