灼熱しやくねつ)” の例文
多くの草花がへとへとにしなびかかつてゐる灼熱しやくねつの真つ昼間を、瞬きもせず澄みきつた眼を開いて、太陽を見つめてゐるのはこの花です。
石竹 (新字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
それは、よく廻つた独楽こまが完全な静止に澄むやうに、また、音楽の上手な演奏がきまつてなにかの幻覚を伴ふやうに、灼熱しやくねつした生殖の幻覚させる後光のやうなものだ。
桜の樹の下には (新字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
灼熱しやくねつした鐵の手は私の急所を掴んでゐた。恐ろしい瞬間! 苦悶と暗と燃燒ねんせうにみちた瞬間! 生きとし生ける人間のうちで、私が愛された以上に愛され度いと望む事は不可能である。
灼熱しやくねつてんちりあかし、ちまた印度インド更紗サラサかげく。赫耀かくえうたるくさや、孔雀くじやく宇宙うちうかざし、うすもの玉蟲たまむしひかりちりばむれば、松葉牡丹まつばぼたん青蜥蜴あをとかげひそむも、刺繍ぬひとりおびにして、おごれる貴女きぢよよそほひる。
月令十二態 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)