“濃（こまか）” の例文
長さも左（さ）のみならざる棟（むね）に、一重の梅や八重桜、桃はまだしも、菊の花、薄荷（はっか）の花の眼（め）も及ばぬまで濃（こまか）きを浮き彫にして香（にお）う計（ばか）り
風流仏 (新字新仮名) ／ 幸田露伴(著)
左近倉平の周囲に引っ切りなしに集まって来ている若い女達で、長いか短いか、濃（こまか）いか淡（うす）いか、兎も角も左近倉平に関係の無かったという人は、恐らく幾人も無かったでしょう。
奇談クラブ〔戦後版〕：16 結婚ラプソディ (新字新仮名) ／ 野村胡堂(著)
何處か厭味のある、ニヤケた顏ではあるが、母が妹の靜子が聞いてさへ可笑い位自慢してるだけあつて、男には惜しい程肌理（きめ）が濃（こまか）く、色が白い。秀でた鼻の下には、短い髭を立ててゐた。
鳥影 (旧字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
婦人の専ら任ずる所に就て濃（こまか）に之を視察すれば、衣服飲食の事を始めとして、婢僕の取扱い、音信贈答の注意、来客の接待饗応（もてなし）、四時遊楽の趣向、尚お進んで子女の養育、病人の看護等
女大学評論 (新字新仮名) ／ 福沢諭吉(著)
その赭い陽が西へ傾き谷々の陰影（かげ）が濃（こまか）くなった時隊商は野営の用意をした。
喇嘛の行衛 (新字新仮名) ／ 国枝史郎(著)
何処か厭味のある、ニヤケた顔ではあるが、母が妹の静子が聞いてさへ可笑（をかし）い位自慢にしてるだけあつて、男には惜しい程肌理（きめ）が濃（こまか）く、色が白い。秀でた鼻の下には、短い髯を立てゝゐた。
鳥影 (新字旧仮名) ／ 石川啄木(著)
「お曾與は良い娘でしたよ、生一本で、情が濃（こまか）くて——」
銭形平次捕物控：097 許婚の死 (旧字旧仮名) ／ 野村胡堂(著)