ぜん)” の例文
〔譯〕ぜんは必ず事をし、けいは必ず人をづく。歴代れきだい姦雄かんゆうの如き、其ぬすむ者有り、一時亦能く志をぐ。畏る可きの至りなり。
是が彼の最初の失敗で、学校側の人達は佐藤を忘恩の痴者しれものののしった。斯ういう悪声はぜんを追うて一般に拡がるものである。
これあに文学の一大進歩ならずや、おもうに一事一運のまさに開かんとするや、進むに必ずぜんをもってす。たとえばなお楼閣にのぼるに階級あるが如し。
慶応義塾の記 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
現在の系統は一朝一夕に発達したものではなく、ガリレー以来ぜんを追うて発達して来たもので、種々な観念もだんだんに変遷し拡張されて来たものである。
物質とエネルギー (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
もとより天平と弘仁の気分には著しい相違があるが、しかし天平時代末期から弘仁初期へかけての変遷は、ぜんを追うたものであって、どこにも境界線はない。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
人をして獣類の所業をなさしめ、これをて楽しむ者もまた人類の所業にかなわず。いったん禁止せばその徒の狼狽ろうばいもあらん。ぜんをもって廃業せしめば可なり。
国楽を振興すべきの説 (新字新仮名) / 神田孝平(著)
外交の事迫るや、その出来事を朝廷に奏聞せり、奏聞するは則ち勅裁を仰ぐのぜんなり。和戦の議を諸侯にはかれり、諸侯に諮るは、諸侯に左右せらるるの階梯かいていなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
第十四 諸山ノ雪ぜんヲ以テ融釈シ常時諸川ニ適宜ノ冷水ヲ送リ曾テ乾涸ヲ致サズ以上人命ノ係ルトコロ最大 夏月ハ冷冬月ハ温 熱ヲ解シ寒ヲふせグ天地ノ神工もとヨリ偶然ニ非ズ 路上ノ積雪我儕わがせいコレヲ蹋過とうかスルガ如キあに奉戴ノ意ヲ存セザルベケンヤ
(新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)