とどこほ)” の例文
旧字:
その人とりや、ものにとどこほらず、事にちやくせず、神儒しんじゆを尊んで神儒をばくし、仏老ぶつらうあがめて仏老を排す。
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
医者は手をんで考へた。アンチヘブリンをまさうかとも思つたが、それにしては熱が少しもなかつた。下剤をかけようかとも思つたが、それにしては腹に少しのとどこほりもなかつた。
反つてそれから来る温さに感謝して、秋の、冬の長い夜な夜なを、繩をうたり、草鞋わらぢを編んだりして、夜をかさねばならなかつた。家賃は四月目五月目位からとどこほり出した。畳はすり切れた。
俺は年をつた。愚癡になつたんだ。昔の生物学者が云つたやうに、人間の身体から一種の気が立つて行く、其気が適当に発散しないで凝滞ぎようたいすると病気が出る。俺も気の発散がとどこほつたのであらう。
畜生道 (新字旧仮名) / 平出修(著)
われながら心の関にとざされて越えやすき世をとどこほるかな
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)
もそろもそろにとどこほる鉛の電車、一片ひとひら
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
うつらうつら月日ゆくこそ楽しけれ世にとどこほる心は無しに
礼厳法師歌集 (新字旧仮名) / 与謝野礼厳(著)