満腔まんかう)” の例文
旧字:滿腔
私はそれを聞くと、満腔まんかうの反感を抑へて、へずかう答へた。それは私の精一ぱいの強気であつた。
良友悪友 (新字旧仮名) / 久米正雄(著)
が、円満具足したゲエテの僕等を行動に駆りやらないことに満腔まんかうの不平を洩らしてゐる。これは単にハイネの気もちと手軽に見て通ることの出来るものではない。
僕等でさへ先生の誠心に動かされて退会の決議をひるがへし、今日も満腔まんかうの不平を抑へて来た程ぢやないか、剛一何物ぞ、いやしくおのれが別荘で催ふさるゝ親睦会であつて見れば
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
其社会の為に涙を流して、満腔まんかうの熱情を注いだ著述をしたり、演説をしたりして、筆は折れ舌はたゞれる迄も思ひこがれて居るなんて——斯様こん大白痴おほたはけが世の中に有らうか。はゝゝゝゝ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
其書は満腔まんかう欝気うつきべ、思ふ存分のことを書いて居るが、静かに味はつて見ると、強い言の中に柔らかな情があり、穏やかに委曲ゐきよくを尽してゐる中に手強いところがあつて中〻面白い。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
充分御協議致しましていさゝか理想を実行して見たいのでありますが——かし決して御心配なさいますな、社会主義倶楽部の諸君は、無論満腔まんかうの尊敬と同情とを以て、貴嬢あなたの御事業を賛助致しませう
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)