あた)” の例文
熱い灰の中で焼いた蕎麦餅そばもちだ。草鞋穿わらじばき焚火たきびあたりながら、その「ハリコシ」を食い食い話すというが、この辺での炉辺ろばたの楽しい光景ありさまなのだ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
必ずしもそれほど下品な料簡りょうけんから出るとは限らないという推断もついて見ると、いったん硬直こうちょくになった筋肉の底に、またあたたかい血がかよい始めて、徳義に逆らう吐気むかつきなしに
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
其等それらに半死の心臓をあたためながら
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
僕は子がないから、自分の血を分けたあたたかい肉のかたまりに対するなさけは、今でも比較的薄いかも知れないが、自分を生んでくれた親をなつかしいと思う心はそのだいぶ発達した。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)