清濁せいだく)” の例文
清濁せいだくあわせむ、という筆法で、蜂須賀小六はちすかころくの一族をも、そのでんで利用した秀吉が、呂宋兵衛に目をつけたのもとうぜんである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
田舎言葉ゐなかことばには古言こげんのまゝをいひつたへてむかしをしのぶもあれど、こと清濁せいだくをとりちがへて物の名などのかはれるも多し。
「しかしこゝは大きいですから、清濁せいだく併せ飲むって具合で、首なんてことは滅多にありません」
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
と低い声で細々こまごまと教えてくれた。若崎は唖然あぜんとして驚いた。徳川期にはなるほどすべてこういう調子の事が行われたのだなとさとって、今更ながら世の清濁せいだくの上に思をせて感悟かんごした。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
その音の清濁せいだくをしらべるのが一番確かな方法とされ、明治の末頃までもつぱら硬貨の流通してゐた頃は、東京の店にも、砥石を据ゑて、五十錢銀貨を一つ/\叩いてから受取る店があつたものです。
銭形平次捕物控:274 贋金 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
江戸のろくんだ家に生まれた江戸の武士、このきずなをどうしよう! いや、それはもう、清濁せいだくの時流を超え、世潮せちょう向背こうはいをも超えてどうにもならない性格にまでなっている
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
大きく世の変動しているときは特に清濁せいだく飛沫しぶきもはげしい。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)