深股ふかもも)” の例文
三、四人、いちどに丹波の前後から組みついて、脾腹ひばら、首すじ、籠手こて深股ふかもも、滅茶滅茶に突いたり、斬ったりしてしまった。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深股ふかももの傷は、柘榴ざくろのようにはじけている。ほかにも一、二ヵ所のかすり傷があって、五体はむごたらしいべにに塗られていた。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
槍は、深股ふかももの辺を、突きいていた。ひどく出血はしたが、生命いのちは取りとめた。痛みなどは、少しも覚えなかった。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ちッ……ちッ……」と深股ふかももの傷を押さえながら一心に、脇差をとりに行こうとするらしいが、何せよ深傷ふかでだ。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、上と下で、白刃をり合っていた次男経高が、深股ふかももへ矢をうけて
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
朴炭ほおずみの粉を口いっぱいんでは、韮粥にらがゆを食べて寝ている又八と、鉄砲で穴のあいた深股ふかももの傷口を、せッせと焼酎しょうちゅうで洗っては、横になっている武蔵たけぞうと、まき小屋の中で二人の養生は、それが日課だった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二、三合、刃まぜをする間に、奥田孫太夫は、あっと深股ふかももを抑えて
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
深股ふかももを突かれたので、横ざまに倒れた。二番目の槍は、顔へむかって来た。その千段のあたりをつかんで、ね起きようとしたとき、彼の旗本が、駈けあつまって、その敵を滅茶滅茶に斬り伏せた。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
矢傷をこじらせた深股ふかももの傷口にはうじさえわいていた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)