海坊主うみぼうず)” の例文
それはシャボン玉を夕暗ゆうやみの中にすかしてみたように、全体がすきとおり、そして輪廓りんかくだけがやっと見えるか見えないかのものであり、形は海坊主うみぼうずのように
霊魂第十号の秘密 (新字新仮名) / 海野十三(著)
手のつぎには、びしょぬれになった、海坊主うみぼうずのような人の姿が、ニューッとあらわれたではありませんか。
怪人二十面相 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この動物は、風のなまぐさに、そらを飛んで人を襲うと聞いた……暴風雨あらしの沖には、海坊主うみぼうずにもばけるであろう。
海の使者 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それこそ、ものすごい水平線すいへいせんうえを、くろ海坊主うみぼうずが、おおまたにあるいているかもしれぬとおもわれたのです。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)
顋の短かい眼の大きなその子は、海坊主うみぼうず化物ばけもののような風をして、其所そこいらをうろうろしていた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
……夕風に吹かれながら、こんなところであなたと魚づくしをやる気はねえのだから、さめなと海坊主うみぼうずなとお好きなものをお釣りなせえ。両国の請地うけちへ見世物に出すなら後見こうけんぐらいはいたします
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
どんどん歩いて月島の海岸に近づくと大辻さんのすきをねらって、海面から海坊主うみぼうずのような頭を出し、いちはやく服をぬいで、大辻さんに渡し、自分は逃げてしまったのだ
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ぼくは、なにかの雑誌ざっしたんだよ。くろ海坊主うみぼうずが、にょっきりとなみうえから、あたましたのを……。いんまに、海坊主うみぼうずが、あちらのおきえるかもしれない。」と、少年しょうねんは、いいました。
北の少女 (新字新仮名) / 小川未明(著)