カイリ)” の例文
太平丸が最初に報告を受けた時には、その船は加奈陀かなだの北西二百カイリの海上にあったが、それから半年のあいだに二千カイリ以上も西へ来ているのだ。
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
わずか数カイリの遠さに過ぎない水平線を見て、『空と海とのたゆたいに』などと言って縹渺ひょうびょうとした無限感を起こしてしまうなんぞはコロンブス以前だ。
(新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
最初に救難信号エス・オー・エス受信ききつけたのは、北海丸から二十カイリと離れない地点で、同じように捕鯨に従事していた同じ岩倉会社の、北海丸とは姉妹船の釧路丸くしろまるだった。
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
一九一七年三月三十日、室戸丸は『鷹の城』のために、晩香波バンクーバー島を去る七〇カイリの海上で拿捕だほされました
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
場所は、退却を余儀なくされている青軍せいぐんの最前線にあたる土佐湾とさわんの南方五十カイリの洋上だった。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
されば、東京から僅かに十五、六カイリ離れた海で、春浅い頃から晩秋へかけ、鱗の鮮紅に錦彩を放つ大鯛がいつでも釣れる訳である。釣を休むのは手にみぞれが冷い十二月、一月の二ヶ月だけだ。
葵原夫人の鯛釣 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)
倫敦・じぶらるたる——一三一八カイリ。所要時間、三日と二十三時五十分。
何等罪状の指摘できないマターファ(彼は、いわば喧嘩けんかを売られたに過ぎぬのだから)が千カイリ離れた孤島に流謫るたくされ、一方、島内白人の殲滅せんめつ標榜ひょうぼうして立った小タマセセは小銃五十ちょうの没収で済んだ。
光と風と夢 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「P・F号の無電に依ると、流血船の位置は領海へ迫ること三百カイリですよ船長、そこに何か惨劇があったとすれば、救護に行くのは我々の任務ではないでしょうか」
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
弩竜号は、大陸を離れて五日目には、灼熱しゃくねつ印度洋インドように抜けていた。その日のうちに、セイロン島の南方二百カイリのところを通過し、翌六日には、早やアラビア海に入っていた。
海中にはんカイリほども突き出した岩鼻で、その沖合には悪性の暗礁あんしょうが多く、三陸沿海を南下してくる千島寒流が、この岬の北方数浬の地点で北上する暖流の一支脈と正面衝突をし
灯台鬼 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
ジブラルタルから馬耳塞マルセーユまで——六九七カイリ。二日と一時間五十分。
その十二ノットの釧路丸は、欝陵島の警察からの報告によれば、殺人事件の前々日に、あの島の根拠地を出漁したんでしょう?……ところが、欝陵島から根室までは、最短八百五十カイリもあります。
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
半年間少しも針路を変えずに二千カイリ以上も同じ方向へ漂流するなんて、そんな馬鹿げた事があるか、——そのうえ鮮血だ、兇悪な殺人だ、惨劇だ、まるで百年も昔の海洋小説のような事を云う
流血船西へ行く (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
「欝陵島から根室まで、最短距離をとって、八百カイリもありますか?」
動かぬ鯨群 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
それは干潮満潮の時に特に激しくなるもので、その潮流に乗ったが最後、どんな巨船でも海の底へ巻きこまれて、粉未塵こなみじんにされた後、はるかに房総半島の二十カイリも沖へ抛り出されてしまうのである。
骸骨島の大冒険 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
だから深谷氏は、九州沖からこの附近までの間に於ける黒潮海流の平均速度を、二十四時、つまり一昼夜五〇カイリ乃至八〇カイリと見て、赤潮の来襲を、今日の午後までと、大体の計算をしたのでしょう。
死の快走船 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)