泣面なきつら)” の例文
小「あれさ、お上役に逢っては一言もないからさ泣面なきつらしてさ、泣面は見よい物じゃアないねえ、あの火吹達磨や、泣達磨や、へご助や」
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
仕方なしにモトの木賃宿に帰って来ると泣面なきつらに蜂という文句通りに、大惣が大熱を出いて、煎餅布団をハネけハネけ苦しがる。
近世快人伝 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
さきにはモーターが故障で、いままた磁力砲の具合がわるいとは、泣面なきつらに蜂がとんできてさしたように、災難つづきです。
怪塔王 (新字新仮名) / 海野十三(著)
とにかく三十も越えて男一人前にひげまで生えて居るような奴が、声をあげて止度とめどもなしにあんあんと泣く、その泣面なきつらと来たらば醜いとも可笑おかしいとも言いようがないのである。
病牀苦語 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
厳しく叱られて泣面なきつらになつたことの多い割合には、習ふことが身に沁みず、只ぶら/″\と月日を過し、閑さへあればたわいもない、くだらん本ばかり読み耽つてゐたものである。
「ほんとに済みません。泣面なきつらなどして。あの常さんて男、何といういやな人でしょう」
野菊の墓 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
「われはテルミット弾で東京を焼いてしまう決心だ。日本人の泣面なきつらが見えるようだ。」
昭和遊撃隊 (新字新仮名) / 平田晋策(著)
すると彼等は機嫌をなおして、泣面なきつらが大にこにこに変ってしまった。
泣面なきつらに蜂 がすというような目ばかり見ましたが、これからとてもなおなおどういう難儀があるかわからん。けれどもまず進むだけ進むのが真に愉快であるという考えから一首の歌をみました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
「また、笹子峠のようにそくなって泣面なきつらをかかねえものだ」
ただみくちやの泣面なきつらのべそかき小僧が口のうち
東京景物詩及其他 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
泣面なきつら大使2・7(夕)
さかさにはりに釣り下げられているくせに、「いまに日本国中の人間どもが泣面なきつらをかくぞ、ざまア見やがれ」と大きなことをいっているのは、怪盗とはいえ、なんと面憎つらにくいことではないか。
地中魔 (新字新仮名) / 海野十三(著)
蟠「なんと、そんなに顔色を変えて泣面なきつらをするな、これは百金だな」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)