泡鳴ほうめい)” の例文
清子様にあの位の苦悶があれば同様に泡鳴ほうめい氏もどの位お苦しみになつたかしれないと云ふことは直に誰にでもお察しが出来ると思ひます。
らいてう氏に (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)
文壇ぶんだん論陣ろんぢん今やけい亂雜らんざつ小にながれて、あくまでも所信しよしん邁進まいしんするどう々たる論客きやくなきをおもふ時、泡鳴ほうめいさんのさうした追憶ついおくわたしにはふかい懷しさである。
文壇球突物語 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
キリスト教の匂いの強い学校も多く、明治文人の岩野泡鳴ほうめいというひとも若い頃ここの東北学院に学んで聖書教育を受けたようだし、また島崎藤村とうそんも明治二十九年
惜別 (新字新仮名) / 太宰治(著)
叡山の根本中堂こんぽんちゅうどうの前にその木があるという。鶴見はまだ見ないが、泡鳴ほうめいがそれについて一度語ったことを覚えている。伝教大師でんぎょうだいしの時代までさかのぼるとすれば、その渡来も随分古いものである。
露伴、藤村とうそん、鏡花、秋声等、昭和時代まで生存していた諸作家は別として、僅かに一、二回の面識があった人々は、この外に鴎外おうがいびん魯庵ろあん天外てんがい泡鳴ほうめい青果せいか武郎たけおくらいなものである。
文壇昔ばなし (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
また知らう筈もないが氏の書かれた処に依ると氏は泡鳴ほうめい氏に対して友情以上に何物も持たなかつたから肉の誘惑に(勿論自分が愛を持つまでは)動かされまいと決心したと云つてゐられる。
赤黒い人テカ/\光る顔、話がおもしろくなつて来ると大きな鼻の穴を一層ひろげて、出来る丈け口を開けて四辺あたりの人を呑んでしまふやうな声を出して笑ふ泡鳴ほうめい氏は小胆な正直者であります。
妾の会つた男の人人 (新字旧仮名) / 伊藤野枝(著)