気随きずい)” の例文
旧字:氣隨
わたくし生前せいぜん何事なにごとみな気随きずい気侭きまましとおし、自分じぶんおもいがかなわなければこの生甲斐いきがいがないようにかんがえてりました。
おおかたわたし達も誰も居なかったら自由自在だっておまえはおよろこびだろうが、あんまりそりゃあ気随きずいぎるよ。
雁坂越 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
まだ其様そんなことを云うか、手前は五分試ごぶだめしにもせにアならん奴だ、うゝん……よく考えて見よ、まず奥方さま御死去になってから、お秋の方の気儘きまゝ気随きずい神原兄弟や手前達を引入れ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
たとい母が心配するにしても、単に彼女に対する掛念けねんだけが問題なら、あるいは僕の気随きずいをいざという極点まで押し通したかも知れなかった。僕はそんな風に生みつけられた男なのである。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
わたしみたいな気随きずいなわがまま者はそんなふうにされたら窮屈で窮屈で死んでしまうでしょうよ。わたしがこんなになったのも、つまり、みんなで寄ってたかってわたしを疑い抜いたからです。
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
それにつけても、癆咳ろうがいという病気があるため、わがまま気随きずいにしておいたのが悪かった、と涙まじりにいていた、お米の母の言葉が思い起こされて、お吉は、溜息ためいきをついて、その人の姿を眺めた。
鳴門秘帖:04 船路の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その呼び止め方の気随きずいさがお茂の心に痛みを与えた。
地上:地に潜むもの (新字新仮名) / 島田清次郎(著)