気疾きばや)” の例文
気疾きばやなのががらりと開けると、中は真赤まっか紅色べにいろさっと透通るように光って、一畳ばかり丸くこう、畳の目が一ツ一ツ見えるようだッたてこッてす。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
が、気疾きばやくびからさきへ突込つっこむ目に、何と、ねやの枕に小ざかもり、媚薬びやく髣髴ほうふつとさせた道具が並んで、生白なまじろけた雪次郎が、しまの広袖どてらで、微酔ほろよいで、夜具にもたれていたろうではないか。
鷭狩 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
一目そのえんなのを見ると、なぜか、気疾きばやに、ずかずかと飛着いて、下りる女とは反対の、車掌台の方から、……早や動出うごきだす、鉄の棒をぐいと握って、ひらりと乗ると、澄まして入った。
妖術 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
(喧嘩の夢を見て、寐惚ねとぼけたんだよ。)とばかりお夏は笑っていたが、喧嘩の夢どころではない、殺人の意気天にちゅうして、この気疾きばやの豪傑、月夜に砂煙すなけむりいて宙を飛んだのであった。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とばかり笑み迎えて、さあ、こちらへ、と云うのが、座敷へ引返ひっかえす途中になるまで、気疾きばやに引込んでしまったので、左右とこういとまも無く、姉夫人は鶴が山路に蹈迷ふみまよったような形で、机だの、卓子テイブルだの
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)