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歸村
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きそん
長庵は
横目でジロリと
眺め
空嘯けば十兵衞は何れ
歸村を致せし上御禮の仕樣もありぬべしと
親しき中にも
禮義を知る弟が心ぞしほらしき
爲つゝ賊難に
罹りたるは如何なる前世の
宿業にやと
諦め候より外に致し方
無之と申立ければ越前守殿
假令弟十兵衞が何と申共一日や二日で
歸村の成る
可所にも非らざれば
強ても止むべきが兄たる者の
情ならずや其方が
仕成方甚だ以つて其意を
して居たりける
爰に
又慈恩寺村にて
大博奕の
土場が出來鴻の巣なる鎌倉屋金兵衞と云ふ
名稱の
博奕打が來りて大いに
卻含金兵衞は五百兩ばかり
勝し折柄自分の村方に
急用出來せしにより
急ぎ
歸村せよと飛脚の來りける故
仲間に
斯と
告て
振舞などを