此度こたび)” の例文
... われを射んとしたりしかど。此度こたびもその矢われには当らず、肩のあたりをかすらして、後の木根きのねに立ちしのみ」ト。聞くに聴水は歯を咬切くいしば
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
高士世に容れられざるの恨みも詮ずるところはかはることなし、よし/\、我図らずも十兵衞が胸に懐ける無価の宝珠の微光を認めしこそ縁なれ、此度こたびの工事を彼にいひつ
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
驚きて、また忘れたり、ゆるされと、此度こたびはしかと、しら玉の米の嚢をひきかつぎかかへて戻る、米の玉、しら玉あはれ。現なるこれや現か、ゆめならず、現なりけり。
雀の卵 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一筆しめし※偖傳吉事江戸より今宵こよひ立ち歸り申候まゝ此上は夜々のちぎりも相成ずと存じ候へば勿々なか/\つかの間もしのび難く思ひは彌増いやまし※夫に付き傳吉こと江戸に於てためたる金百五十兩此度こたび持歸もちかへり候途中盜賊に付かれ候ゆゑ野尻のじり宿の近江屋與惣次よそうじと申す宿屋の下女お專へ右の金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
驚きて、また忘れたり、ゆるされと、此度こたびはしかと、しら玉の米の嚢をひきかつぎかかへて戻る。米の玉、しら玉あはれ。現なるこれや現か、ゆめならず、現なりけり。
観相の秋 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
「さては彼の狐めが、また今日も忍入りしよ。いぬる日あれほどこらしつるに、はやわすれしと覚えたり。憎き奴め用捨はならじ、此度こたびこそは打ち取りてん」ト、雪を蹴立けだてて真一文字に
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
此度こたびは黄金丸肩をかすらして、思はず身をも沈めつ、大声あげて「おのれ今日も狼藉ろうぜきなすや、引捕ひっとらへてくれんず」ト、走りよって木の上を見れば、果して昨日の猿にて、黄金丸の姿を見るより
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)