歌垣うたがき)” の例文
かれ天の下治らしめさむとせしほどに、平群へぐりの臣がおや、名は志毘しびの臣、歌垣うたがきに立ちて、その袁祁をけの命のよばはむとする美人をとめの手を取りつ。
我邦わがくにの昔の「歌垣うたがき」の習俗の真相は伝わっていないが、もしかすると、これと一縷いちるの縁をいているのではないかという空想も起し得られる。
映画雑感(Ⅵ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
御子みこが、蝦夷えびすの娘と、馬糧倉の中で、昼間から、歌垣うたがきのように、くわりしておられた。——相手もあろうによ、女奴と」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
男女幾十人が数珠じゅずの環のめぐるがごとく歓喜に満ちて踊り巡るのですが、わが国古代の歌垣うたがきもこんなものかと思われます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
此山は『万葉集』に新田山にいたやまと歌われ、妻覓つままぎの歌垣うたがきなども行われたらしい名所であるが、高さは二百三十米ばかり、東側と北部は水成岩、全山の三分の二を占むる主要部は
山と村 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
「古いことを担ぎ出したものだな、あれは歌垣うたがきといって、やっぱり男女入り乱れて踊るんだ、ずいぶんいかがわしい話もあるが、今の流行はやりものよりは幾分か風流だろう」
大菩薩峠:20 禹門三級の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
多分に未開な下野国しもつけ地方では、上下共に楽しみといえば自然飲み食いか男女の関係にかぎられている。筑波の歌垣うたがきに似た上代の遺風が今なお祭りの晩には行われるほどだった。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)