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檞
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かし
ふりがな文庫
“
檞
(
かし
)” の例文
色の青い娘は、着てゐる薄い茶色のジヤケツを、分厚に出来た、黒い
檞
(
かし
)
の木のベンチの、一番暗い隅に押し付けるやうにして坐つてゐる。
駆落
(新字旧仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
ほのかな遠くの
檞
(
かし
)
の花の甘い臭に刺戟されてじつと自分の悲哀を凝視めながら、細くて赤い嘴を顫してゐる気分が何に代へても哀ふかく感じられる。
桐の花とカステラ
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
白樺、
白楊
(
はくやう
)
、楡、
山楂子
(
さんざし
)
、
檞
(
かし
)
などの木が、やつと芽を吹いたばかりである。楡の木の
背後
(
うしろ
)
には黒樺の花が満開してゐる。ルスチニア鳥が
直
(
ぢ
)
き側で一羽啼いてゐる。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
彼は大きい
檞
(
かし
)
の木の下に先生の本を読んでゐた。檞の木は秋の日の光の中に一枚の葉さへ動さなかつた。どこか遠い空中に硝子の皿を垂れた
秤
(
はかり
)
が一つ、丁度平衡を保つてゐる。
或阿呆の一生
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
此の解剖室と校舍との間は空地になツてゐて、ひよろりとした
檞
(
かし
)
の樹が七八本、
彼方此方
(
あちこち
)
に淋しく立ツてゐるばかり、そして其の蔭に、または處々に、雪が薄汚なくなツて消殘ツてゐる。
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
▼ もっと見る
高く
吊
(
つる
)
した青銅の
洋燈
(
ランプ
)
の外には灯はまだ
點
(
つ
)
けてはなかつたけれど。別に暖かみのある光が廣間と
檞
(
かし
)
の階段の下の方の段を
覆
(
おほ
)
つてゐた。この
紅
(
べに
)
を帶びた輝きは大食堂から洩れて來るのであつた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
しかし、スリッパの跡はどこまでも消えずに彼等を導いていった。その足許には、雪を踏みしだくような感じで埃の堆積が崩れ、それを透かして、
檞
(
かし
)
の冷たい感触が、頭の
頂辺
(
てっぺん
)
まで滲み透るのだった。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
檞
(
かし
)
の高みにゐる御身たち
ランボオ詩集
(新字旧仮名)
/
ジャン・ニコラ・アルチュール・ランボー
(著)
しかし椎の木は
野蛮
(
やばん
)
ではない。葉の色にも枝ぶりにも
何処
(
どこ
)
か落着いた所がある。伝統と教養とに
培
(
つちか
)
はれた士人にも恥ぢないつつましさがある。
檞
(
かし
)
の木はこのつつましさを知らない。
わが散文詩
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
彼の威厳は
荒金
(
あらがね
)
のやうにそこにかがやかに残つてゐる。彼のクリストに及ばなかつたのも恐らくはその事実に存するであらう。クリストに洗礼を授けたヨハネは
檞
(
かし
)
の木のやうに
逞
(
たくま
)
しかつた。
西方の人
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
檞
部首:⽊
17画
“檞”を含む語句
檞樹
木檞
檞餅
一木檞
檞木
檞材
青檞