樂屋がくや)” の例文
新字:楽屋
「何んだ、錢形の親分か、——改めて名乘るにも及ぶまい。待て/\晩飯の支度中で樂屋がくやは煙だらけだ、表へ廻つてくれないか」
『あれこそは小松殿の御内みうちに花と歌はれし重景殿よ』など、女房共の罵り合ふ聲々に、人々ひとしく樂屋がくやの方を振向けば、右の方より薄紅うすくれなゐ素袍すほうに右の袖を肩脱かたぬ
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
さき二人ふたりあたまながいのと、なにかに黒髮くろかみむすんだのは、芝居しばゐ樂屋がくや鬘臺かつらうけに、まげをのせて、さかさつるした風情ふぜいで、前後あとさきになぞへにならんで、むかうむきにつて、同伴者つれの、うして立淀たちよどんだのをつらしい。
三人の盲の話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
小左衞門の愚痴ぐちは際限もなく續くのです。その間平次はそれを空耳に聽くやうな甚だ冷淡な恰好で、せつせと土間から舞臺へ、樂屋がくやへと調べ續けて居ります。
樂屋がくやの天井の、綱の結び目に、刄物が入つてゐたんだから、切れても不思議はありませんよ」
自分の匕首を樂屋がくやに忘れて來て、それを皆んなに見せて置き、後から行つてその匕首を持出してお園を殺し、夕立に濡れたのを誤魔化ごまかすために、夕立が晴れきらぬうちに
「いえ、お玉は日が暮れると身體が明きます。ひと風呂樂屋がくや風呂を浴びて、酉刻むつ少し過ぎに緑町へ歸つたが、姉の歸りが遲いので、私と入れ違ひに戌刻いつゝ時分に迎へに來ましたよ」
「無理もありません。此處を樂屋がくやにして出る分には、誰にもわかるわけはありません」
小左衞門と女房のお仲は、二人を薄暗くて寒さうな、舞臺裏の樂屋がくやに案内しました。
平次はその隣りのいつもは樂屋がくやに使ふ八疊を借りて、一人づつ呼出して見ました。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
「ところで二人の樂屋がくやを見せて貰はうか」
默つて案内したのは、汚い樂屋がくや