極致きょくち)” の例文
鍔ぜり合いは、どう極致きょくちせい……こうなると、思いきり敵に押しをくれて、刀を返しざま、身を低めて右胴を斬りかえすか。
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
なるほど火の芸術は! 一切いっさい芸術の極致きょくちは皆そうであろうが、明らかに火の芸術は腕ばかりではどうにもならぬ。
鵞鳥 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
東洋ではむかしから、死ぬことで何もかも解決して来たものです。禅道がその極致きょくちです。大死たいし一番、無の境地に立って、いっさいに立ち向かおうというのです。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
そして紺碧こんぺきの空へ、雄大なる芙蓉峰ふようほう麗姿れいしが、きょうはことに壮美そうび極致きょくちにえがきだされた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
春琴は我が家に飼っている一番優秀な鶯に「天鼓てんこ」と云う銘をつけて朝夕その声を聴くのを楽しんだ天鼓の啼く音は実に見事であった高音のコンという音のえて余韻のあることは人工の極致きょくち
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「天佑は迷信ではない。忍耐と努力との極致きょくちじゃ」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
君臣の美徳を極致きょくちに実践したもので、これに死を与えることは、道徳に死を与えるも同じである。又、彼等の行動は、御条目——武家諸法度の作法を、一点もみだしてはいない。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雲団々くもだんだんはたちまち暗く、たちまち、ぱッと明るく、明暗たちどころにかわる空の変化はいちいち下界げかいにもうつって、修羅しゅらのさけびをあげている湖畔こはんうずは、しんに凄愴せいそう極致きょくち壮絶そうぜつ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)