棒鱈ぼうだら)” の例文
うす汚ないじじいが、宅の玄関先に棒鱈ぼうだらのようにぶら下っているのを、五歳になったばかりの私も、人々のうしろからのぞいて見ました。
遺産 (新字新仮名) / 水上滝太郎(著)
四本であるけばそれだけはかも行く訳だのに、いつでも二本ですまして、残る二本は到来の棒鱈ぼうだらのように手持無沙汰にぶら下げているのは馬鹿馬鹿しい。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
停年でやめた大学教授でさ、いいかい、カサカサの乾パンでさ、おまけに学のある棒鱈ぼうだらときている。
女人をして惚々ほれぼれさせないではいない有名なる巨躯紅肉きょくこうにく棒鱈ぼうだらのように乾枯ひからびて行くように感ぜられるに至ったので、遂に彼は一大決心をして、従来の面子めんつを捨て、忍ぶべからざるを忍び
棒鱈ぼうだら乾鮭からざけうずたかく、片荷かたに酒樽さかだるを積みたる蘆毛あしげこまの、紫なる古手綱ふるたづないて
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そして街から街へ、先に云つたやうな裏通りを歩いたり、駄菓子屋だぐわしやの前で立留たちどまつたり、乾物屋かんぶつや乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、たうとう私は二條の方へ寺町てらまちさがり其處の果物屋くだものやで足を留めた。
檸檬 (旧字旧仮名) / 梶井基次郎(著)
そして街から街へ、先に言ったような裏通りを歩いたり、駄菓子屋の前で立ちまったり、乾物屋の乾蝦ほしえび棒鱈ぼうだら湯葉ゆばを眺めたり、とうとう私は二条の方へ寺町をさがり、そこの果物屋で足をめた。
檸檬 (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
「——打たば打たしめ、棒鱈ぼうだら太刀魚たちうおでおうちあれ——」
木の子説法 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)