来春らいはる)” の例文
「この光丸さんには許婚があって、来春らいはる、その人と祝言するらしいです。友田さんはその仲介をなさるとかいう話ですよ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
「うむ。——今年は、稲鳰いなにお、六つあげだようだな。小作米出した残りで、来春らいはるまでは食うにいがんべな。」
蜜柑 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
宿の亭主にかれた時に、次郎左衛門は来春らいはるまで御厄介になるといって、亭主の顔に暗いかげをなげた。正直な亭主は彼のためにその長逗留を喜ばなかったのである。
籠釣瓶 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
精出して養生して、来春らいはるはどうか暇を都合して、おっかさんと三人吉野よしのの花見にでも行くさ——やアもうここまで来てしまッた。疲れたろう。そろそろ帰らなくもいいかい
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
「もう追々寒くなりますからね、寒くなると雪が積って行けませんから、来春らいはるになって、あのお地蔵様の供養をしたいと思っているところですから、お松さん、その時においでなさいな」
大菩薩峠:21 無明の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
私は唯だ来春らいはる、正月でなければ遊びに来ない、父が役所の小使こづかい勘三郎かんざぶろうの爺やと、九紋龍くもんりゅうの二枚半へうなりを付けて上げたいものだ。お正月に風が吹けばよいと、そんな事ばかり思って居た。
(新字新仮名) / 永井荷風(著)
或る日嬢様に向つて私も愈/\来春らいはるは博士論文を呈出しますと仕たり顔に云ふと、オヤ貴君あなたも御用学者になるの、博士と云ふと大層らしいが三年経つと三歳みつゝといふ比喩たとへもありますから子
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
「だから僕は来春らいはるは東京へ出ようかと思っている」
非凡なる凡人 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
来春らいはるの種もみをどうすべかや」
飢えたる百姓達 (新字新仮名) / 今野大力(著)
来春らいはる、学校を出たら、おれが仲介なこうどになって、式を挙げさせることも、話が出来ちょる。……ところが、その光丸に、君んとこの息子が、手を出しよるちゅう話、親父の君から、止めさせてくれ
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)