朦々もう/\)” の例文
しめつた土にれる下駄の、音が取留めもなくもつれて、疲れた頭が直ぐ朦々もう/\となる。霎時しばしは皆無言で足を運んだ。
鳥影 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
午後の講義を始める頃、停車場の方で起る物凄ものすごい叫び声は私達の教室へ響けて来た。朦々もう/\とした汽車の煙はさくを越して硝子窓ガラスまどの外までやつて来て、一時教室の内を薄暗くした。
突貫 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
殺氣さつき朦々もう/\としててんおほへば、湯船ゆぶねまたゝに、湯玉ゆだまばして、揚場あがりばまで響渡ひゞきわたる。
銭湯 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
寝られぬまゝには更けぬ。時計一点を聞きてのちやうやく少しく眠気ねむけざし、精神朦々もう/\として我我われわれべんぜず、所謂いはゆる無現むげんきやうにあり。ときに予がねたるしつふすまの、スツとばかりに開く音せり。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)