書遺かきのこ)” の例文
其の書遺かきのこした一通を新吉が一人で開いて見ますると、病人のことで筆も思う様には廻りませんから、ふるえる手で漸々よう/\書きましたと見え、その文には
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『まだ、時刻もある故、その間に、お書遺かきのこしておく事でもあれば、それへ料紙りょうしすずりを上げてあるから、何なりとも』
夏虫行燈 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その書遺かきのこしたものなどを見れば真実正銘しょうみょうの漢儒で、こと堀河ほりかわ伊藤東涯いとうとうがい先生が大信心だいしんじんで、誠意誠心、屋漏おくろうじずということばか心掛こころがけたものと思われるから
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
此の書置を見て新吉は身の毛もよだつ程驚きましたが、此の書置は事細かに書遺かきのこしました一通で是にはなんと書いてございますか、此の次に申し上げます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
く毀してくれた、あゝかたじけない、真実な者じゃ、なアる程左様……これは先祖が斯様な事を書遺かきのこしておいたので、わし祖父じゞいより親父も守り、幾代となく守りきたっていて
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
書遺かきのこし候我等一昨年いっさくねん九月四日の奧州屋新助殿をおひさの実の兄と知らず身請されては一分立たずと若気の至りにて妻恋坂下に待受まちうけして新助殿を殺害せつがい致し候其の時新助殿始めて松山の次男なる事を
松と藤芸妓の替紋 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)