曲亭馬琴きょくていばきん)” の例文
「やッぱり学者なんでしょうね、その男は。曲亭馬琴きょくていばきんとどっちでしょう。私ゃ馬琴の『八犬伝はっけんでん』も持っているんだが」
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
伊波伝毛乃記いわでものき』といふものあり。これ曲亭馬琴きょくていばきんあんに人をそしりておのれをたこうせんがために書きたるものなりとか。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
かの曲亭馬琴きょくていばきんなども頻りにそれを攻撃していたのであるが、それがまた復活して来て、“勿体なや父さんはお年の上に非業の最期”と修正しろというのである。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
江戸時代随一の物知り男曲亭馬琴きょくていばきんの博覧強記とその知識の振り廻わし方は読者の周知の通りである。
西鶴と科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
たとえば曲亭馬琴きょくていばきんの『烹雑にまぜ』という随筆に、佐渡さどしまの記事がやや詳しく載せられ、浜に流れ寄るくさぐさの異郷の産物の中に、椰子藻珠やしもだまなどが有ることをしるしている。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
その鮮かな曲芸と、曲芸師の身なりが、ようやくポツポツ拾いよみしていた、曲亭馬琴きょくていばきんの『八犬伝』のなかの犬阪毛野いぬさかけのを思わせて、アンポンタンの空想ずきを非常に楽しませてくれた。
旧聞日本橋:17 牢屋の原 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
日本でも北村季吟きたむらきぎんがはじめて『山之井やまのい』という季を集め評釈したものを作り、それからだんだん元禄げんろく天明てんめいを経てその季の数もふえて来、曲亭馬琴きょくていばきんのあの綿密な頭で『歳時記栞草しおりぐさ』なるものをこしら
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
私が最後に茗荷谷みょうがだにのほとりなる曲亭馬琴きょくていばきんの墓を尋ねてから、もう十四、五年の月日は早くも去っている……。
伝通院 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
上田秋成うえだあきなりの「雨月物語うげつものがたり」のうちに「蛇性じゃせいいん」の怪談のあることはたれも知つてゐるが、これは曲亭馬琴きょくていばきんが水戸にいた人から聞いた話であるといふことで、そのおもむきがやゝ類似してゐる。
梟娘の話 (新字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
しかるに、何から思いついたのやら、ふと曲亭馬琴きょくていばきんの小説『夢想兵衛胡蝶物語むそうべえこちょうものがたり』を種本たねほんにして、原作の紙鳶たこを飛行機に改め、「彼はどこへでも飛んで行く。」という題をつけ
つゆのあとさき (新字新仮名) / 永井荷風(著)