旗指物はたさしもの)” の例文
あまたけのいただきを陣地とする武田伊那丸たけだいなまるの一とう、北をみれば、人穴城ひとあなじょうにたてこもる呂宋兵衛るそんべえの一族、また南の平野には、あおい旗指物はたさしものをふきなびかせて
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
馬印うまじるし旗指物はたさしものがこゝに置いてあるところをみれば、ひょっとすると弾正政高は城攻めの手に交っていないで、此の陣小屋の奥の一と間に寝ているのかも知れない。
と、馬の手入れをし、武器をつくろい、旗指物はたさしものを蔵から出し、家ノ子郎党を集める者も出て来た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
西陣の織物を一手にさばいた本家福屋の番頭から仕上げた善兵衛が、暖簾のれんを分けて貰うと、公儀に讒訴ざんそして、天草あまくさ旗指物はたさしものを引受けたとか、身分不相応の奢侈僭上しゃしせんじょうふけったとか
富士川もよりには、和田わだ樋之上ひのかみの七、八百大島峠おおしまとうげにも三、四百余の旗指物はたさしもの、そのほか、津々美つつみ白糸しらいと門野もんののあたりにある兵をあわせておよそ三千あまり
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芋ヶ瀬の荘司ごときにお渡しあそばさるること、しかるべからずとは存じまするが、しかし古来より合戦の場合、旗指物はたさしものを戦場に遺棄し、敵の手にこれを奪われましたためし
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
菊池半助きくちはんすけの書面が、家康いえやす本城ほんじょう浜松へつくと同じ日にいくさになれた三河武士みかわぶしの用意もはやく、旗指物はたさしものをおしならべて、東海道を北へさして出陣した三千の軍兵ぐんぴょう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
他ならぬ島津太郎丸! 駕籠の周囲まわりを取り巻いたは、黒装束の烏組の徒! 戸のとざされた後の駕籠! 乗り手は西川正休で、その駕籠脇に従ったは、町人姿の伊集院五郎! 旗指物はたさしものは立ててない
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)