放蕩三昧ほうとうざんまい)” の例文
蘿月は一家の破産滅亡の昔をいい出されると勘当かんどうまでされた放蕩三昧ほうとうざんまいの身は、なんにつけ、禿頭はげあたまをかきたいような当惑を感ずる。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
Tのあの奇行の動機も、恐らく大部分はそうした好奇心だったに相違ない。T自身では、彼の放蕩三昧ほうとうざんまいに対する細君の嫉妬しっとを封ずる手段だと称していたがね。
一人二役 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
この世の中のことといえばいっさいがっさいが謎なんだ! おれが深い深い放蕩三昧ほうとうざんまいの底へはまりこんで行くようなときには(おれにはそんなことよりほかに何もできやしないのだ)
始終うちを外の放蕩三昧ほうとうざんまい、あわれなかないを一人残して家事の事などはさら頓着とんじゃくしない、たまに帰宅すれば、言語もののいいざま箸のろしさてはしゃくの仕方がるいとか、琴を弾くのが気にくわぬとか
二面の箏 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
それから自分の放蕩三昧ほうとうざんまいの巻——自慢にもなるまいが、まあ一種の懺悔ざんげかね
これまでは何の気もなく母親からもまた伯父自身の口からも度々たびたび聞かされていた伯父が放蕩三昧ほうとうざんまいの経歴が恋の苦痛を知りめた長吉の心にはすべて新しい何かの意味を以て解釈されはじめた。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)