ぞこな)” の例文
「ふ、ふん。くたばりぞこないめ。急に気を変えやがったな。ようしッ、あとで一寸だめし五分試しだぞ。……じゃあお手元から先に洗おうか。やい金蓮」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
友「はい/\此のお村にばかされまして、今晩牛屋の雁木で心中致しました自業自得のくたばぞこないでございます」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「ちぇっ、なんだ、ふだんは巨人ハルクといわれていばっているあらくれ男のくせに。これくらいのことでをあげるたあ、ぞこないの女の子みたいじゃないか」
火薬船 (新字新仮名) / 海野十三(著)
... とうとう三返目に見物人が手伝って往生おうじょうさしたと云う話しです」「やれやれ」と迷亭はこんなところへくると急に元気が出る。「本当に死にぞこないだな」と主人まで浮かれ出す。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一度死を図って死にぞこなった政枝は反動的に極度に死を怖れ、死から出来るだけ遠退きたいと心中もがき続けた。だが、死を思うまいとすればかえって死の考えがうかび、夢にも度々たびたび死ぬ夢を見た。
勝ずば (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
先生には斬られぞこない、坊さんには丸められちまい、せっかくみがいたがんりきのかおもつぶれそうでございますから、なんとか眼鼻のあくようにしようと思って、執念深くもしょっちゅうあれから
大菩薩峠:07 東海道の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
石でも泥でもみんなしてこいつにぶっつけておやんなさいよ。手を叩いて笑ってやるがいいわよ。こんな生れぞこない!
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「ア痛ッ。ア痛たたた。くそっ。負けるもんか。死にぞこないの掃溜はきだめ婆」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
父はぼくを不良な生れぞこないみたいによく面罵した。事実、ぼくは成長するに従って、父に少しでもよい面を見せようとはしなかった。故意に、父を憂えさせるような素振りや仕向け方ばかり見せた。