そくな)” の例文
虱は慌てて其辺そこらひ回つたが、職人の掌面は職人の住むでゐる世界よりもずつと広かつた。虱は方角をそくなつて中指にのぼりかけた。
「もうけそくなって不機嫌な処だから、少し手間が取れました。」この外交家だから、二本目は、公園の坂の出口を行越ゆきこした町で、煙草を買って借りたなどはものの数でもない。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
しかも普通の落ち方ではない。はるかこなたの人後じんごだから心細い。葬式の赤飯に手を出しそくなった時なら何とも思わないが、帝国の運命を決する活動力の断片を見損みそこなうのは残念である。
趣味の遺伝 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お蔦 成りそくなったら田舎へ帰って、鋤鍬すきくわを握るさ、うちはお百姓なんだろう。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
何、どうしたと、そくなって反対あべこべ当身あてみくらった。それだから虚気うっかり手を出すなと言わねえことか。や、銀平殿お前もお帰りか。「はい、旦那唯今。「うむ、御苦労、なに下枝さんはどうじゃ。 ...
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)