はか)” の例文
桃水や一休ほどの器量なきものが遊女を済度さいどせんとしてくるわに出入りすることはみずからはからざる僭越せんえつであり、運命を恐れざる無知である。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
わたくしは古今幾多の伝記を読んであきたらざるものがあつた故に、ひそかに発起する所があつて、自らはからずしてこれに著手した。是はわたくしの試験である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
これ予が自らはからず、敢てここに憲政の本義に関する愚見を披瀝ひれきして大方の叱正を乞わんとする所以ゆえんである。
いかでかおん身を棄つべき。我を棄て給ひしは、我を逐ひて風塵のちまたはしらしめ給ひしは、おん身にこそあれ。かく言はゞ、おん身は我を自らはからざるものとやし給はん。
おもえば女性の身のみずかはからず、年わかくして民権自由の声にきょうし、行途こうと蹉跌さてつ再三再四、ようやのち半生はんせいを家庭にたくするを得たりしかど、一家のはかりごといまだ成らざるに、身は早くとなりぬ。
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
そうして、自分の子女に対する外には教育の経験を持たない私が、自らはからずして、実際の教育に少しばかり関係して見ても好いという衝動をいつの間にか心の隅に感じているのでした。
文化学院の設立について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
ああ私はみずからはからずして高い高い標準を立てたような気がする。しかし私はけっしていたずらに高い理想を立して非難の口実を探したのではない。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
七月七日に柏軒は京都の旅宿に病み臥し、自ら起たざることをはかつて身後の事を書き遺した。此書は現に良子刀自が蔵してゐる。わたくしはしもに其全文を写し出すこととする。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
私はみずからはからずして氏の思想の哲学的価値に関して、是非の判断を下そうとするのではない。哲学者としての氏の思想および人格をあるがままに、一の方針の下に叙述しようと試みるのである。
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)