捻伏ねじふ)” の例文
滅多に手荒なことをしたことのなかった父親をして、しまいにお島の頭髪たぶさつかんで、彼女をそこに捻伏ねじふせてぶちのめすような憤怒を激発せしめた。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二人はここで又もや組討くみうちを始めたが、若い重太郎は遂においたる父を捻伏ねじふせた。彼は母のかたきと叫びつつ、持ったる洋刃ないふを重蔵ののど差付さしつけたのである。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
大鼻の頭に汗のたまを浮べながら、力一杯片膝下に捻伏ねじふせているのは、娘とも見える色白の、十六七の美少年、前髪既に弾け乱れて、地上の緑草りょくそうからめるのであった。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
と手を取って逆に捻伏ねじふせられたからおきる事が出来ません。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
七兵衛も進んで主人の急を救おうとすると、最初はじめの小さい男が這って来て七兵衛の足をすくった。彼は倒れながらに敵の腕を取って、一旦は膝下しっか捻伏ねじふせたが、なりに似合わぬ強い奴でたちまち又跳返はねかえした。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)