手緩てぬる)” の例文
「何が乱暴。両親の顔に泥を塗って、それでも飽き足らずに、父親の首へ縄を掛けようとする不孝者には、これ位の事ではまだ手緩てぬるい」
女記者の役割 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
アドルフ・マイとマンハイムにたいするまだかなり手緩てぬるい攻撃が始められただけで、はちの巣をつついたような騒ぎになった。マンハイムは面白がった。
「いけません、癖になるからいけません、あんな性質たちの悪い組合をお上が取締らないというのが手緩てぬるい」
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そんな手緩てぬるいんじゃありませんや。二十一番館の四ツ辻と、前田橋通りじゃ、非常線を張っているんで。
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同人雑誌を発行したのは、山野の知らしてきたような手緩てぬるいものではない。俺はそれを思うと暗然たる気持がする。が、俺を圧迫したのはこの作品ばかりではない。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
まとまった詩だの歌だのを面白そうにぎんずるような手緩てぬるい事はできないのです。ただ野蛮人のごとくにわめくのです。ある時私は突然彼の襟頸えりくびを後ろからぐいとつかみました。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
この夫唱婦和という子供の飯事ままごとみたいな手緩てぬるい生気のない家庭は作れまいかと存じます。
離婚について (新字新仮名) / 与謝野晶子(著)
一知もラジオいじりさえ許してもらえれば……という条件附で承知したもので、その纏まり方の電光石火式スピードというものは、万事に手緩てぬるい村の人々をアッと云わせたものであったが
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
笹野新三郎は近頃の名與力で、辛辣しんらつな加役などからは、手緩てぬるいと評判を取つてゐる人物、人に怨まれる筋などがあらうとも思はれません。
辛辣しんらつな加役などからは、手緩てぬるいと評判を取っている人物、人に怨まれる筋などがあろうとも思われません。
「気の毒だが、二人まで殺されちゃ、手緩てぬるい事ではらちがあくまい、兎も角、一緒に来て貰い度いが——」
お松はしかし、そんな手緩てぬるい事には牽制けんせいされそうもありません。
お松は併し、そんな手緩てぬるい事には牽制けんせいされさうもありません。