手易たやす)” の例文
分水嶺は既に独逸ドイツの国境を越して墺太利オーストリーの領分になつてゐるので、さう手易たやす其処そこを極めることは出来ないやうである。
イーサル川 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
が、天才を信じない犬たちは——いや、天才を発見することは手易たやすいと信じてゐる犬たちはユダヤの王の名のもとに真のユダヤの王をあざけつてゐる。
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、その点が明かになれば、存外手易たやすくお嬢さんの在家ありかが分らないものでもありません。一度私にそのお嬢さんのお部屋を見せて頂けないでしょうか。
一寸法師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
大丈夫でござりまする、御安心なさってお帰り、と突っぱねる。その安心がそう手易たやすくはできぬわい、とうるさく云う。大丈夫でござりまする、と同じことをいう。
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
けれども、いざさうして實際じつさいふでを動かしはじめてみると、なかなか手易たやすくは行かなかつた。
処女作の思い出 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
その女をともかく一角いつかどの令嬢仕立にするまでお鯉の手許てもとにおいた、そして嫁入りをさせて安心したといった。しかしやがて五万円は諸々もろもろの人の手によって手易たやすく失われてしまった。
一世お鯉 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「サウロよ、サウロよ、何の為にわたしを苦しめるのか? とげのあるむちを蹴ることは決して手易たやすいものではない。」
西方の人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
自己弁護位手易たやすいものはない。
闇中問答 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)