扁舟へんしゅう)” の例文
食後の小憩を未醒氏渚の扁舟へんしゅうさおさして湖心にづ。木川子は真裸になりて水中に泳ぐこと一、二分、たちまち躍り出して「アー冷たい」。
惜しい事に今の詩を作る人も、詩を読む人もみんな、西洋人にかぶれているから、わざわざ呑気のんき扁舟へんしゅううかべてこの桃源とうげんさかのぼるものはないようだ。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
蒋幹は、わざと、綸巾りんきんをいただき、道服をまとい、一の酒と、一人の童子をのせただけで、扁舟へんしゅう飄々ひょうひょう、波と風にまかせて、呉の陣へ下って行った。
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
こうして財布の底までハタイてしまうと、明日あすは又「一葉の扁舟へんしゅう、万里の風」だ。「海上の明月、うしおと共に生ず」だ。彼等の鴨緑江節おうりょっこうぶしを聞き給え……。
爆弾太平記 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
けだシ典薬寮味原樹、掃部かもん寮大庭ガしょうナリ、摂津ノ国ニいたレバ神崎蟹島かにしま等ノ地アリ、此門連戸、人家絶ユルコトナク、倡女しょうじょ群ヲ成シテ扁舟へんしゅうさおサシ、舶ヲ看撿かんけんシテ以テ枕席ちんせきすすム、声ハ渓雲ヲ過ギ
蘆刈 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
立ちあがった二つの人間が、櫂と棹をむちのようにひらめかした。しぶきが彼らを包んでときどき見えなくした。扁舟へんしゅうと云うよりもまだ危げであった。大きな波のうねりが姿をかき消し突きあげた。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
水をゆく扁舟へんしゅうの上の人。
宮本武蔵:08 円明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)